セイジが息を飲むのがわかった。


目を見開いて言葉を失い、半ば放心しているように見えるセイジの体を、押しやるように何人もの部長が車のほうに移動させる。


ゲートに向かうセイジに背を向け、わたしはコツコツとヒールの音を甲高く立て社の中に入っていく。


黒塗りの車に乗り込む彼の姿はもう見なくてもいい。


「カレン!!!」


絶叫に近い彼の声を背後に聞きながら、わたしはエレベーターに滑り込んだ。


さようなら、セイジ。



たまたま一人っきりだったエレベーターの中で、CLOSEボタンを押し続け、わたしは下を向いて三十秒だけ泣いた。