わたしはドアの前にへたり込んだ。

「なんだ……」


落としたティアラを持っていたのは王子様なんかじゃなかったのだ。


本当にセイジなんじゃないかと、セイジがわたしが運命を落としたあの場所で、それを拾うべく定められた人なんじゃないかと、心のそこで願っていた。


わたし、バカだ。


本当にバカ。


セイジはあの日、飛行機のトラブルでニューヨークにはずいぶん遅くについたと言っていたじゃない。


だいたいそんな御伽噺みたいなことが、あるわけはない。


あんまり自分がバカすぎて、乾いた笑いが喉もとからせり上がってくる。


なのに涙も出てくる。


笑いながら泣く女なんて、誰かに見られたら通報ものだ、とわかっている。


それでもわたしはどうすることも出来なかった。


たぶん冷たいコンクリートの上に何十分もすわり込み、立ち上がれずにいた。







このティアラで、わたしを支えていた最後の綱が断ち切られたような気がした。