「すごいのよ。イスタンブールは刺激的で奇跡の街なの。そりゃ今は確かに情勢が不安定だけど、基本的に昔からあの街に住む人たちはーー」

「奇跡の街?」


「そう。東洋と西洋の融合ってよく言われるでしょ?」


「うん」

「モスクの隣に教会があるのよ? イスラムの僧侶さんとキリスト教の牧師さんが仲良しなのよ? 信じられる? すぐ近くのイスラエルでは三千年も宗教争いをしてるのに、あそこではキリスト教もイスラム教もユダヤ教もないのよ? 奇跡だと思わない?」

「そうなんだ」

でも今は、その街から近い場所は紛争地域だ。というか、あのへん自体がいつ紛争になってもおかしくない。


カレンがこういうことに興味があるというのは、新しい発見だった。


人種の坩堝(るつぼ)の中で育ってきたからそう思うんだろうか。