「すいません。他の仕事が入ってまして、すっかり遅くなってしまいました。今日、急に契約だなんて、嬉しい限りです。ありがとうございます」
ハンカチで汗を押さえながら爽やかに笑うセイジに、すっかりモトムラは毒気を抜かれていた。
呆けたように何も喋らない。
「あ、あの。元村専務。これは……。あの。マミヤは勘違いで……」
わたしまでしどろもどろになる。
「い、いや。マミヤさん。別に。そう別に今日契約というわけではなく。今日は具体的なお話でも、と思い、ついでにいつもお世話になっているカレンさんにたまにはご馳走しようと」
え……セイジが来たから$10000000契約が、流れる?
「ま、待ってください。元村専務ーー」