「契約書にサインを頂いてからでいいでしょうか?」

逃げるなんて許さないわよ、そういう目でモトムラを睨むようにまっすぐ見つめ、わたしは書類ケースから契約書類一式を取り出すため、横を向いた。

これだけはクロークに預けず、肌身離さずもっている。

書類ケースから書類を取り出す手がぶるぶると震え、床にそれをぶちまけてしまいそうだった。







「いやぁ、元村専務。お待たせいたしました」
「え?」

わたしの隣の椅子が、派手な音をたてて慌ただしく引かれる音がする。

え。
どうして。

そこには額に玉の汗をかいたセイジが、息をきらせながらも笑顔を浮かべて座っていた。