口ではジョージはそう言いながら、声にははっきりと逡巡が現れている。
自分の昇進。年棒。
わたしの身なんかより、そっちのほうがよっぽど興味があるのよね。
全く、これでよくわたしをもう一度口説こうなんて考えたもんだわ。
―――男なんて本当につまらない。
妻子がいるのにわたしを抱こうとするあのモトムラも。
一度は結婚まで考えた女、あまつさえ、今現在もう一度口説いている女より、結局、自分の出世を取る男も。
所詮、男なんてみんなこんなものだ。
「戻りなさいジョージ。上司命令よ」
「……」
さも傷ついたようなそぶりでゆっくり後ろを向くジョージを見ながら、ああ、わたしは本当に一人で戦うんだ、と辛い現実をつきつけられた。
寂寥感で胸がつまり、上手く口がきけるかどうかわからなかった。