「ジェシー? ジェシーじゃないよ。俺はミッドタウンで人と会う約束があってそこにいたんだ。そしたらセイジから電話があって、カレンが一人でモトムラに会いに行った。どんな要求されるかわからないって。それで飛んできたんだよ。モトムラは、君にいやらしい要求してきたんじゃないのか?」


セイジの名前を聞くと、わたしの岩なみに硬いはずの決心も、熱で溶かされた砂岩のようにもろく崩れ去りそうだった。

セイジ……。

「カレン。ここで一つ契約を増やしたところでどうだっていうんだ。俺たちのチームは今、営業部門で独走状態じゃないか」