「はい、はい、え? ええ! それはもちろん! ええ! ええもう、すぐお伺いします。え? わたし、一人、ですか? ――。そうですね。はい今男性は出払っておりますし――」


受話器を置き、その上に両手を乗せてゆっくりと大きく深呼吸する。

「カレン?」


わたしの動作が目にとまったらしい、ちょうど後ろを通りかかったジェシーが、低いブースの向こうから、怪訝そうな声を出す。
わたしは、そんなに、はたから見てわかるほど動揺していたのかな。

「契約よ。$10000000の」
「カレン。まさかそれ」
「そう。ソン・ホールディングスの元村専務」
「用心してね。誰か、そう。マミヤに一緒に行ってもらいなさい?」