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セイジもジョージも外回りで出て行ったどこか閑散としたオフィスで、わたしは(はばか)ることなくため息を漏らした。

ケイトが一人で淡々と雑務をこなしている。
ああ、彼女は妊娠していなかったんだっけ。
そんなことはもうどうでもいい。


妊娠したフリをしてまでジョージが欲しいのなら、喜んで差し上げるわ。
日本では大切なプレゼントには熨斗(のし)というものをつけるらしい。
ケイトもいるかしら、熨斗。

もう、ジョージをあなたから取り上げるなんてことは、つめの先ほども考えていないから、そんなに睨まないでほし――。

「はい。マサキです」

デスクの上の電話が鳴って、わたしはすぐに受話器を取り上げた。