ティアラを持っているどこかにいるはずの王子様を思いながら、わたしはこの危機を乗り切らなきゃならない。
乗り切ってみせる。

それでも……。

「ありがとう」

温かい涙が止まらない。

血の通った腕に抱き取られた時の安心感。
安らぎ。安堵。
心の隅々までセイジのぬくもりが広がっていくのを、わたしはどうすることもできなかった。

来てくれて嬉しかった。
もし来てくれなかったら、わたしはきっと今夜、こんなに平常心を保つことはできなかっただろう。

「別に、セイジだったからじゃない」

自分に言い聞かせるように声に出して呟いてみた。