君に読心術があったら、俺はもう口も聞いてもらえないかもしれないな。

「俺がついてる」

傷ついている君を、こうしてずっと抱きしめていたら、計算外の言葉が漏れるのを自分で止める自信がまるでない。
俺はそっと腕の力を抜いた。

「セイジ……」

その瞬間、カレンの唇から漏れた音も……俺の知らない響きを持っていた。

「ほら」

スーツのポケットからハンカチを出してカレンの涙をぬぐう。

「泣けるじゃないか」

今は上司なんかじゃない、俺の好きな、二つ年下の普通の女の子だよ。

「明日になったら忘れてよね」
「忘れるわけないだろ」

もったいない。