上司と部下という高い壁に風穴を開けるためなら、俺はなんだってする。
君の心に俺の存在を刻むためなら、なんだって利用する。
だってこうでもしなけりゃ、君はいつまでたっても仕事という殻で自分を鎧って、そこから出てきやしない。

ごめんカレン。

大事には至らなかったとはいえ、父親の脳梗塞。
こんなひどい事態を利用しようとするなんて、俺はいい人どころかもう、極悪人だよ。
それでも、極悪人になることをためらわない。


あんなことがあって、男はこりごりだという思いが言動のはしばしに漏れ出る君には、今でなければ俺を男として意識させることができない。
手段を選んでいたら、君はきっと自分ひとりで立ち直ってしまう。

……惹かれているから。
どうしようもなく君を手に入れたいから。
君の傷を癒すのは、これから先も俺でありたいから。

ずっとずっと、君に必要だと思ってほしいから。
俺はもう絶対にひかない。