「セイジ……離れなさい。怒るわよ。上司命令よ」

自分のものとは思えないほど弱弱しい声しかでなかった。

「時間外。社外。上司命令は無効」
「お願い、離れて……」
「嫌だ」


そうしてくれないと本当に涙がこぼれてしまうのに。
そこでわたしはやっと、振り切るように強く身をよじってセイジの腕から逃れようとした。
なのに彼はわたしの手首を掴んでいた手を離し、今度こそ、それをわたしの背中にまわした。

もっと二つの身体が密着する。
身をよじればよじるほど、セイジの大きな手のひらがわたしの背中に食い込んだ。