今、何時なんだろう。
まだ日付は変わっていないのかな。
なんだか身震いするほど寒くて、ひどく疲れていて、身体がいうことを訊いてくれない。
わたしはまっすぐ歩けているのかな。
この靴、こんなに歩きにくかったかな。
小さな照明だけの暗い廊下を抜け、整然と椅子の並んだ誰もいない広い総合受付の前を通る。
夜間出入り口はどこだろう。
「カレン」
「……え?」
今、わたしの名前が聞こえたような気がした。
立ち止まって声のしたほうを向くと、暗がりの椅子の群れの中から静かに立ち上がったしなやかな肢体が、こっちに滑り出すのが見えた。
「……セイジ?」
はにかんだような、困ったような表情で彼は言った。
「来ちゃったよ」