きっともうパイロットとして復帰できないことを悟っていたんだろう。

「パパ……」

リラの気遣わしげな声に、パパは切れ切れに答えた。

「もう飛べないんだな。いいよ。数年早まった……だけのことだ。空……充分……楽しんだよ」


この病院は患者や家族に凄く好意的で、個室の場合は、つき添いが二名まで認めてもらえる。
パパは個室を取っていた。
パパの付き添いがママで、精神的にいまだ不安定なママの付き添いが、リラという感じだ。

明日、仕事のあるわたしは、一人でとぼとぼと夜間通用口に向かった。