眠っているママを揺り起こし、パパの手術が成功したことを伝える。
ふらふらしているママを、わたしとリラで両側から支えながらパパの病室に向かう。
パパのベッドにはカーテンが閉まっていた。

まだ麻酔で眠っているパパのまわりでわたしたち三人は、いつの間にか(しわ)の増えているその顔に見入った。
数時間がたった頃だろうか。

「シズカ……」

うっすらと目をあけたパパが、天井をむいたまま、ママの名前をつぶやいた。
それから横を向いてわたしたちのことをはっきり認めると、娘二人の名を呼ぶ。

「カレン、リラ」
「パパ、手術は成功よ。しっかりリハビリをすれば普通の生活が送れるわ」

わたしはパパの耳元に口を寄せ、囁いた。

「そうか……」

パパの目はどこか遠く、ここではない場所を見ていた。