ぷりぷりしたまま、エレベーターを上がり、自分の部署のある階の廊下を歩いていた。

「カレン……」

わたしを呼び止める不快な声が背後から聞こえる。
つい数ヶ月前までこの声を愛おしいものだと感じていたことが嘘みたいだ。

「何? ジョージ」

わたしは今、虫の居所が悪いのよ。

「話があるんだ。今度、落ち着いて時間が取れないかな? 二人で……。その、昔よく行った――……」
「取れないわ」

仕事の話なら会社ですればいいでしょ? 
何が昔よく行った――……よ。
あれだけのことをしておいて、プライベートでわたしと友達に戻れるとでも思っているのかしら?

ジョージをおいてさっさとフロアに戻ろうとした。