セイジはバレエについての会話なんてただの話の流れで、もう頭の隅にもない様子で、膝上のナフキンを椅子に置いて中座した。

わたしの心臓がバクバクと血液を送り出す。
違う……。

セイジはあの時間、絶対にマンハッタンにいなかった。
きっと飛行機の遅れって、交通機関が終わるギリギリくらいの時間で……。
だから会社の下見にも来られなかったのよ。

空になった席を見つめながら、違う、違う、と自分に言い聞かせていた。
違う以前にわたしはセイジに惹かれてなんかいないし、セイジだってそれは同じだ。