あのティアラを拾った人にわたしは出会えるわけはない。

そう分かりきっていたから、だからわたしはその架空の人を待ち続けることにしたのだ。
男はこりごり、そう、もう恋をするのはまっぴらだった。

あんな裏切られ方をするくらいなら、生涯仕事をして、こうして男性でも女性でも、気の合った友達と楽しく時間を過ごし、穏やかに老いていきたい。
運命の人が靴ではなくティアラを持ってくるのを待ちながら、わたしは満ち足りてこの世を去るの。

今は恋に疲れているから、こんな心境にしかなれないのかもしれない。
わたしにも、いつかまた恋をする日が訪れないとも限らない。

でも、とにかく今は嫌、まるで考えられない。
希望がないのも詫びしいけれど、また辛い思いをするかもしれない、という恐怖がいまだ心の底にへばりついて取れないのだ。