「あの……」

短く迷った末に声をかける。
 “あの”と、わたしの容姿を確認して、同じ日本人だと判断したらしい彼の表情に、目に見えて安堵の色がひろがった。

わかりやすすぎてちょっと笑いそうになってしまった。

「はい」
思った通り日本語が返ってくる。
「どちらかに行かれるんですか? 失礼ですけれど道に迷っていらっしゃるようにお見受けして」

顔に助かった、と書いてある。
五番街には華やかなブランド店も多いけれど、このあたりには大きな会社のビルもたくさんある。