和製モスキートがいつの間にか刺している針からの柔らかい毒が、全身に回っているのよ。
そういうわたしの『公私』の『私』の部分はどうなの?
強力モスキートの毒の威力には、わたしは気がついてしまっている。
いつのまにか刺されて、痛い思いをするのはまっぴらだった。
金輪際、男はもうこりごり。
そこでわたしはふと気づき、自分自身を、やれやれ困ったものね、と嘲笑したくなる。
男、ですって?
セイジは男じゃなくて部下だわ。
たまに食事に行くだけの気のおけないただの部下だわ。
でも、いつか本当に足元をすくわれて立場が逆転するかもしれない、とてもとても優秀な部下。
気がおけないけれど気が抜けない、そういう部下に対して『公』はともかく『私』で助けられているなんて、そんなことがあっていいわけはない。