肩が凝らない相手でわたしには嬉しいし、四の五の言ってもわたしがセイジの存在にかなり助けられているのは事実だと思う。
仕事の面では、本当に彼がきてからスムーズに物事が進む。
デキる上に日本人である、ということが、日系企業の日本人のおじさんたちには最高の安心材料になっている。
『公私ともに』という言葉があるけれど、間違いなく『公』の部分で、今やセイジはわたしにとって、なくてはならない人物だ。
まるでたちの悪いモスキートのように不思議な男だ。
誰も彼もあの柔和な笑顔と、突っ込みどころのない完璧な資料収集に裏打ちされたデータに安心して契約書にサインをする。
もっと値切られると踏んでいたんだけど、という段階でおじさんたちはもう笑顔で彼と固い握手をかわす。
どうして気がつかないの?