聞いたときにはすでに、ふわりと抱き抱えられていた。黒い翼がバサッと開いて、大きく空へ飛び立つ。

「しっかり掴まってて」

 ヒャァー!!
 先輩にしがみつきながら、離れた学校の屋上を見下ろす。

 その瞬間、稲妻のような光が走って、ドカンと大きな地響きがした。
 雷が屋上のフェンスに落ちたらしい。一部、グニャリと曲がってしまっている。

「な、なんで……あんなところに……」
「ただの偶然だといいけどね」

 少しして、何事もなかったように空には晴れ間が差してきた。
 きっと、悪魔の力が関係しているに違いない。


「今さら怖気付いても、もう逃げられないよ? 悪魔のプリンセスさん」


 紅羽先輩の腕の中で、身動きの取れないわたし。
 でも、不思議とワクワクしているの。
 これから待ち受けている大変なことも、先輩となら乗り越えられる気がする。

「望むところです!」


                    fin.