何が起こったの⁉︎
 もう一方の指で反対の涙を拭うと、先輩はペロリと指先を舐めた。

「涙は悲しみの象徴でもあるから、多少のエネルギーとなるみたいなんだ」
「そ、そうなんですね……」

 ぽわんと瞳の赤が濃くなって、戻っていく。
 びっくりした。変に意識しちゃって、ドキドキが止まらない。

「リリアの涙、食べさせてくれる?」

 そのシーンを想像しただけで、顔から花火が上がりそう。

 でも、もう決めたの。

「それで先輩が少しでも元気になるなら、喜んで差し出します! 何滴でも!」
「アハハ、頼もしいよ。これからよろしくね」

 目が合って、頭がふわふわする。
 頬に手を当ててみると、熱くなってきた。
 こんな調子で、十六歳になったとき、夜宮先輩の花嫁になれるのかな。その前に、恋人になるんだよね⁉︎

「それから今度、僕のもうひとつの家を見てみたくない?」
「……それって」

 顔を上げたら、先輩が唇の前でシーッと指を立てて。

「永遠の向こう側の世界」

 小さく口を動かした。
 地球(ここ)とは違う場所。悪魔の住む魔界。


「行ってみたいです!」

 素直にその言葉が出た。
 怖くないと言ったら、嘘になるけど。私も知りたい。
 夜宮先輩の、もうひとつの世界を。

「じゃあ、その前に【おまじない】でもかけておこうかな」
「おまじない……ですか?」
「この先、しっかりリリアを守れるように。いろんな意味でね」