「せんぱい!」

 大きく振り上げた手を、そっと下ろす。
 昨日の出来事を思い出して、胸がドキドキした。
 恋人になってほしいと言われて、すぐに答えられなかった。わたしなんかでいいのか、まだ不安だけれど。

「わたし、いっぱい考えたんです。どうしたら先輩を守れるだろうって」
「うん」
「だけど、そばにいることしか、思いつかなくて」
「うん」

 優しくうなずく夜宮先輩。スーッと大きく息を吸って、勇気を出す。

「もっと力になりたいんです! 先輩とずっと一緒にいるために、先輩が封印されないように。なにか、わたしに手伝えることはありますか?」

 いきおいよく話したのが驚いたようで、夜宮先輩は、一瞬、目を丸くした。
 なにか思いついたみたいな、フッとした笑みを浮かべて。

「そうだなぁ……じゃあ、不幸を食べない僕に、リリアのエネルギーを分けてくれる?」
「もちろん! でも、どうやって……?」

 首をかしげると、プイプイが顔の前に飛んできて、わたしの鼻をコショコショとくすぐる。
 えっ、なになに?

 細い毛がくすぐったくて、ムズムズすると思ったら。


「ハァー……クショーンッ! ハックションッ!」

 大きなくしゃみと一緒に、じわりと涙があふれた。

「い、いきなり……なにを……」

 擦ろうとした手が掴まれて、チュッと目元にキスが落ちてくる。

 わ、わ、ひゃわぁ──⁉︎