いつも通り登校すると、すでにいたトーコちゃんが血相を変えて迫ってきた。なんでも、占いの結果が原因で朝から荒れているんだとか。

「これは事件です。リリちゃんに求愛するオスの影が三匹あります。それも強力な愛の持ち主で、私ではとうてい太刀打(たちう)ちできません」

「三匹って、そんな虫みたいな」

「気をつけてください。きわめて邪悪な星でした。なんとしても、私のリリちゃんに近づく悪魔どもは阻止(そし)しなくては」

 シャーロットを抱きしめながら、ぶつぶつとつぶやいている。
 心配してくれるのはとっても嬉しいけど、たまにトーコちゃんはゾワッとすることを言う。

 悪魔って、まさか……まさかね。

「よお、リリア」

 教室へ入ってきたレオが、ぐっと顔を近づけてわたしの顔をのぞき込む。なにか言いたげな目をして、はあとため息をこぼして離れた。

 もしかして、昨日のことを気にしているのかも。

「お母さんからわたしのこと聞かれて、かばってくれたんだよね。ありがとう。でも、わたしは大丈夫だよ」
「……許したわけじゃねぇからな」

「え?」

 聞き返したところで、レオはトーコちゃんに連れられて教室を出て行った。
 離せとダメですの言い合いだけが、廊下に響いている。

 ぽつんと一人残されたわたしは、こてんと首をかしげた。
 なんだかんだ、あの二人も仲良くなったと思ったら、にやけてくる。


『プイプイ、プイプーイ』

 ポケットの中が騒がしくなって、体が勝手に動き出す。たぶん、夜宮先輩が呼んでいるのだ。

 人の波をよけて、かけ足で階段を上がる。
 弾むように屋上のドアを開けると、待っていた夜宮先輩がふり向いた。