──昔むかし、地球上には悪魔と天使が住んでいました。

 幸せを願う天使と、不幸を求める悪魔。

 お互いはしだいに対立し合い、やがて悪魔は地球から追い出されてしまいました。

 悪魔は悪魔だけの世界をつくり、王さまは三人の兵士にあることを命じます。

 天使のいる地球へしのびこみ、一人残さず不幸にしろと。

 悪魔は天使をうらんでいたのです。

 そんなとき、王さまの元へ一人の天使が現れました。

「わたしが王さまと結婚し、悪魔と天使のかけ橋になりましょう。だから、他の天使に手出しはしないでください」

 天使は約束どおりお妃さまとなり、悪魔の世界で暮らしました。

 残された天使たちも地球で幸せにすごし、何年もの月日がたちました。

 王さまとお妃さまは、お互いの王国を守るためにあるものを残します。

 悪魔と天使の力を持つペンダントは、不滅のエメラルドと呼ばれ、多くの笑顔を生むことになるでしょう──


 飛び出していた絵が消えて、夜宮先輩がパタンと本を閉じる。

「これは、魔界で有名な物語のひとつだけど、どう思う?」
「不滅のエメラルドって、まさか」
「そう、このペンダントのこと。僕らの世界では、エンジェル・ダークや天使のカケラと呼ばれることもある。王国は平和になったけど、新たな争いを生んだ」

 キラキラ光るエメラルドグリーンを手にとり、先輩は悲しそうに話した。