少し遅れて、頭を触りながらぶっきらぼうに。

「ああ……女バスがキャーキャーうるさかったな。ただ顔がちょっと良いだけだろ。どうせ大したことねーよ。それに、どっちかと言えばヨッシーの方がイケメンだろ」

 なにか気に食わないことでもあったのか、夜宮先輩の話題になってからあまり良い顔をしていない。

 ヨッシーというのは、C組の担任でバスケ部の先生である吉田先生のこと。たしかに、カッコいいと人気のある先生だけど。
 レオはそんな風に誰かを悪く言う子じゃないから、少し悲しかった。

「そんな言い方はよくないよ」

 なにか理由があるんだろうけど、レオはふてくされた顔をしてそっぽを向く。
 今日のレオ、どうしちゃったんだろう。

「では、これから見学へ行ってみましょう。ねっ、リリちゃん」

 いつになく前のめりなトーコちゃん。

「えっ、お前ら来んのかよ! 来なくていいから」

 慌てた様子で、わたしより先にレオが反応する。

「唯野くん、なにか都合の悪いことでもあるんですか? たとえば、リリちゃんに会わせたくない人がいるとか?」
「会わせたくない?」
「べっ、べつにそんなんじゃないけど」

 レオはトイプードルみたいな髪をくしゃっとさせると、鼻の頭を触った。嘘をついてるとき、レオがよくやる仕草だ。

「では、問題なしですね」

 おしとやかに笑うトーコちゃんに、レオは面白くなさそうな顔をする。
 勝手にしろと、部活のリュックを乱暴にかついで、足早に行ってしまった。