「えっ?」


 ──今、なんて言ったの?

 ガタガタと窓の外が揺れている。強い風でも吹いているのか、変な音も聞こえてきた。

「チッ、時間切れか」

 バシャッと手から水を出して、王河さんがだんろの火を消す。一瞬にして、部屋は暗くなった。

「リリア!」

 いきおいよく窓が開き、夜宮先輩が飛び込んできた。助けに来てくれたんだ。

 お互いに手を伸ばしたけれど、わたしは王河さんの腕に引っぱられて、引き離される。まるで人質のように、大きな手で口をふさがれた。

「兄さん、バカな真似はやめて。リリアを離してください」
「ペンダントを返せ。そしたら、これ以上手出しはしない」

 わずかにシルエットが見える明るさの中、夜宮先輩の首から、キラキラしたペンダントがぶら下がっている。

 それを目印に、王河さんがものすごい速さでチェーンをちぎり取った。動いたはずみで、わたしの体はすっぽりと抜ける。

【エメラルドグリーンのペンダントには、天使と悪魔の力が宿っていて、ワルい悪魔たちから守っている】

 取り返さないと。ふりむいた瞬間、王河さんの赤い瞳がわたしを見ていた。

「その……ネックレス……」

 まぶたを大きく開いて、驚いているみたい。
 七年前にもらった赤いネックレス。いまだに、持っていると思わなかったんだろう。