「俺の名前は、王河(おうが)。本物の、紅羽(くれは)の兄だ」

 ほんのり明るさを取り戻した部屋。目が慣れてくると、壁に写真がたくさんあることに気づいた。
 小さな男の子と、中学生くらいの男の子。となりには、白い髪の女の人が笑っている。

 あれって、もしかして……。

「ここは昔、俺たち兄弟が暮らしていた祖母の家なんだ。あの頃のまま、なにも変わってないな」

 なつかしむような声。その横顔には、さっきまでの恐ろしさはない。

「七年前、なにがあったんですか?」

 王河さんは、夜宮先輩を守るために、命を落としたと聞いた。とてもつらそうに話す先輩を、今でもはっきり思い出せる。

「君には関係ないことだ」

 トゲのある口調。また、オオカミみたいな目つきに変わった。人を寄り付けないオーラを出して、わたしの前にしゃがみ込む。

「でも、礼を言う。俺は七年、地下の氷に閉じ込められていた。誰のしわざかはわからない。天使の力が……リリアがその呪いを解いてくれた」