「ま、まだ、お父さんやお母さんに聞かないと……それに、まだ中学生だから、その」

 恥ずかしくなって、思わずテーブルの下に隠れた。
 あんなセリフを受けて、まともに顔を見て話せるほど、わたしはまだ大人じゃない。

「婚約といっても悪魔界の中でのことで、今の生活でなにか変わるわけじゃない。それに、結婚できるのはリリアが十六になってからだから」

 目の前にしゃがみ、夜宮先輩が片足をひざまづく。まるで、おとぎ話の王子さまみたいに。

「兄さんからペンダントを預かったとき、約束したんだ。僕がリリアを守るって。たとえこの身が滅んでも、必ず、(ちか)うよ」

 くもりのない瞳。
 わたしも、夜宮先輩を守りたい。

 正直、まだ結婚のことはよく分からないけど、二人ならなんでも乗り越えられる気がするの。

「で、できるなら……正式にお付き合いから、よろしくお願いします」

 おじぎした頭をのっそり上げると、目を丸くした先輩がフフッと笑って。そっと手を取り、わたしの指先にキスを落とす。

 あみ込まれた髪の上に置かれる直前で、バサッと花かんむりが落ちた。