天使の家系である天塚家は、【天使の輪】と呼ばれる指輪を使って悪魔を封じてきた。
 それなのに、わたしはなんの道具もなしに、悪魔退治をしたと思われている。

 お父さんとお母さんは、「我が家に天才が産まれた!」と大はしゃぎ。二人がちょっぴり天然気質で安心すると同時に、次の問題が発生。

「これからは、リリアもデビルハンターとして成長してもらうからね」と、ウキウキで天使の輪を渡されてしまったの。

 黒い翼を見つけるだけなら、言わなければわからない。その甘い考えにバチが当たったのか、わたしまでデビルハンターとして活動することになるなんて。

 ごくわずかだけど、天塚家の他にも天使の家系はいるらしい。

 今はよくても、わたしの周りを怪しまれたら、夜宮家が悪魔だとバレるのは時間の問題かもしれない。
 これまで以上に、気をつけないと。


 たくさんの木に囲まれた屋敷の庭。白いバラに色を付けて、悪魔の妖精たちが遊んでいる。
 アンティークなテーブルの上に、いれたての紅茶が出された。今日は、ストロベリーのフルーティーな香りがする。

「どうしたらいいんでしょうか。わたし、隠し通せる自信がありません」

 目の前に座る夜宮先輩に、弱音を吐いた。
 落ち着いた様子で紅茶を飲むと、先輩はひと呼吸置いて。

「そのときは、そのときだよ。僕たちは、隠れているわけでも、逃げているわけでもない。人間と、普通に生活したいだけ」

 優しい声で、そう話した。