「何があったの?」

 目の前に先輩の顔が飛び込んできて、一気に頬が熱くなる。
 今までの事情を説明すると、夜宮先輩はふーんと落ち着いた様子で聞いていた。

 みんなを教室へ運んで、それぞれの席へ配置する。夜宮先輩の鳴らす指の合図で、時間は動き始めた。

 悪魔の糸を断ち切ったからなのか、佐原くんは正気を取り戻したみたい。トーコちゃんとレオは、まわりをキョロキョロしながら首をかしげている。

 トーコちゃんは足にすり傷をしちゃったけど、みんな無事でよかった。


 誰もいない資料室。わたしと夜宮先輩は、ドアを閉めて鍵をする。
 二人きりだからドキドキしてるなんて、今は不真面目な気持ちは捨てなければ。

「たしかに、妙だと思っていたんだよね。この一週間で、学校中の欠席者が倍に増えていたから」

 小さな台に背をあずけで、夜宮先輩が考えるしぐさをする。

「さっきの糸は、悪魔のしわざ。この校内にも、悪魔がいるね」

 向かい合わせに立つわたしは、「でも」と口を開いた。