「違うの、佐原くんじゃないの」
「は?」
「どうやら、悪魔に操られているようです」

 シャーロットを抱えながら、トーコちゃんがゆっくり立ち上がった。足に血がにじんでいる。

「悪魔なんか、この世にいるわけ……」
「メザワリ。タオス。アマツカサンダケ、ホシイ」

 迫ってくる佐原くんに、わたしたちは身動きがとれない。

 どうしたらいいの?
 二人を危険な目に合わせたくないのに。

 そうだ、このネックレスなら、なにか役に立つかもしれない。

 赤いチャームをギュッと握りしめると、光が現れた。その瞬間、みんなの動きが止まった。まぶたを閉じるトーコちゃん、叫ぼうとしているレオ。襲いかかる寸前の佐原くんまで。

 どうなってるの?
 このネックレスのしわざなの?

 黒い翼が視界に入った。夜宮先輩だ。

 固まっている佐原くんに近寄ると、先輩は無言で手をふり上げた。プツン、プツンと音がして、透明の糸が切れていく。

 先輩のふり向く方へ目を走らせると、ひそんでいた人影がパッと消えた。

 えっ、今のって……。