「キャッ」

 持っていたシャーロットが、地面にたたきつけられる。バランスをくずした拍子に、トーコちゃんも足から倒れてしまった。

「トーコちゃん!」

 あわててかけつけるけど、佐原くんはじろりと見下ろしている。

 やっぱり様子がおかしい。うっすらだけど、腕に透明の糸のようなものが見える。太陽に反射して、たまに光っている。

「佐原くん、なにがあったの? 誰かに、操られているんじゃ……」

 グイッと両腕をつかまれて、動けない。
 佐原くんの目は、真っ黒で光がなくなっている。まるで、心が奪われてしまったかのよう。

「やめて……目を、覚ましてよ」

 となりで、トーコちゃんがわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

 必死に涙をこらえながら、心の中で何度も唱える。
 助けて、夜宮先輩、助けて。

 つかまれていた手が、急に自由になった。
 気づいたら、血相を変えたレオが間に入って、強い力から引き離していた。

「おまえ、リリアに触んな。今度はマジでぶん殴るからな」

 かなり怒った表情で、レオが佐原くんの体を押す。片方の手で、わたしを支えながら。