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「ただいま」

 セーラー服姿のまま、家の玄関を開けたら、ドタバタと足音がふたつ迫ってくる。
 手足にぐっと力を込めて、深呼吸すると。

「リリアーーッ!」

 半分泣いているお父さんと、青ざめた顔をするお母さんが飛びついてきた。今までどこにいたとか、朝帰りとは何ごとかと、交互に口を開いてくる。

 心配をかけてしまったのは反省しているけど、本当のことは説明できない。だって、夜宮家のことがバレちゃう。

「ごめんなさーい! 話せるようになったら、絶対話すから!」

 二人の間をするりとすり抜けて、二階へかけ上がる。

 下でギャーギャーと騒いでいるけど、わたしは自分の部屋へかけ込んだ。棚の一番上の引き出しを開けて、宝物入れを取り出す。

 おもちゃの宝石箱で、ちゃんと鍵もあるの。
 ガチャッと回すと、ビーズのブレスレットやキラキラシールがでてきた。

「懐かしい」

 貝がらやリボンのヘアゴムをかき分けると、一番下から赤いネックレスが見えてくる。
 持ち上げてみると、ガラス細工のようにピカピカしている。久しぶりに触ったけど、キレイ。

 丸い鏡の前。セーラー服の下へ隠れるようにして、ネックレスをつけた。なんとなく、お守りみたいな気持ち。

 憧れの人──夜宮先輩のお兄さんが、わたしと先輩に、力を分けてくれる気がして。