「リリア、やっとこの日を迎えることができたね」

 優しく笑う彼は、夜宮先輩。
 ううん、先輩にそっくりな──わたしの初恋の人。お兄さんだ。

「僕の小さなお姫さまは、こんなにも美しくなったんだね」

 わたしの手をとり、見上げている人たちの前へ姿を出す。多くの悪魔たちが、嬉しそうにわたしたちを見ている。

「これより、王河(おうが)王子とリリア姫の結婚式を始める。この奇跡の歴史的瞬間を、どうか目に焼き付けてくだされ」

 歓声と拍手がわき起こる中、王子は片足をひざまづいて、わたしの手にキスをした。

 これは夢。夢だけど、なんとも言えないもやもやした気持ちが、胸の内を走り回っている。
 姫のしるしであるティアラが、頭に置かれる直前で、映像は真っ暗になった。テレビの電源を消したみたいに。


 窓から光が差し込んで、まぶしさのあまり強く目を閉じる。伏せたシーツから、甘くて優しい香りがした。


「……リリア」

 このままずっと、こうしていたい。やわらかくて、幸せな……。


「リリア、目を覚まして」