「コホン、わたくしを誰だと思っているの? 王子さまと結婚する、天使のリリアよ」

 ドレスのすそを持ちあげて、おしとやかに笑ってみせる。なにをしたっていい。だって、これはただの夢なんだから。

「これは、失礼いたしました! リリア様」

 何人もの兵たちが、こぞって頭を下げた。

 こんなあっさり信じるなんて驚いたけど、わたしは堂々と中へ入る。
 結婚式がどんなものなのか興味があるし、なにより美しいお姫さまを見てみたい。

 宮殿の最上階へ案内され、メイクルームで髪を編んでもらった。

 わたしはニセモノですと言い出せなくて、少しずつ不安になってくる。

「お支度は整いましたでしょうか」

 上品な白ひげの人は、チグサさんだ。
 どうして、こんなところに?

 されるがままに連れられて、わたしは王様とお妃様の前へ。悪魔の世界を取りまとめる人たちの迫力がすごい。

 王冠をかぶった人がいる。その後ろ姿がゆっくりふり向いて、わたしの前へ立った。

 うそ……でしょ?