薄暗いむらさきの空に、きれいな満月が出ている。
 宮殿のようなきらびやかな場所で、華やかな服を着た人たちが歩いていく。

 お祭りかパーティーでもあるのかな。
 わたしも、なぜかむらさきのドレスを着て、長い階段を上っていた。

 ここはどこだろう。おとぎ話の世界より、少し雰囲気は大人っぽい。
 よく見てみると、まわりの人たちの背中には、立派な黒い翼が生えている。

 そうだ、ここは悪魔の世界。
 倒れた先輩に付きそって眠ったから、今は夢を見ているんだ。

 子どもたちが、はしゃぎながら横を走っていく。

「今から、なにかあるんですか?」

 手すりから、下をながめている男の人に話しかけた。

 すると、となりにいる女の人が身を乗り出して、先に答える。

「なに言ってるんだい。今日は、王子の結婚式じゃないか」
「王子?」
「聞いたところによると、姫君になるお方は天使らしいじゃない。悪魔と天使の争いが終わる。これは奇跡。縁起がいいわ」

 陽気に腕を組みながら、彼女たちは去って行った。

 どこかで聞いたことのある話。気になって、わたしはさらに上へと進んでいく。

 らせん階段が終わると、広間に出た。兵隊がいて、これ以上先へは入れないらしい。

 夢なのだから、少しくらいムチャなことしてもいいかな。