半分泣きべそをかきながら、プイプイにお願いしてチグサさんを連れてきてもらった。
 すぐに部屋のベッドへ運び出されて、夜宮先輩は小さな寝息を立て始めた。

 よかった。握る手があたたかいことにも、ホッとして涙が出てくる。

「ありがとうございました。リリア様のおかげで、クレハ様が大事にいたらずすみました。あと、イブリスもおてがらでしたぞ」

 紅茶を入れるチグサさんの笑顔が、ジーンと胸にしみる。

 そっと手を離して、チグサさんを見上げた。

「夜宮先輩は、永遠(とわ)の入り口で……なにをしていたのですか?」

 体は水でぬれていたし、あんな暗闇に一人でいるなんて。想像しただけでゾッとするけど、理由があったはず。
 もうすぐ戻ると言っていたから、チグサさんは何か知っているんじゃないかな。

 コホン、とせき払いをして、チグサさんがわたしをのぞき込む。

「悪魔が負のオーラを食べて生きていることを、ご存じでしょうか?」


【悪魔のまわりには、不幸がおこる】


 両親から教えられてから、何度も目の当たりにしてきた。
 目を合わせていられず、うつむきながら、小さくうなずいた。