奥へ奥へ進んで行って、右、左と曲がる。そのうち広い洞窟(どうくつ)が現れて、向こう側に湖のような水が見えてきた。

 ここが、永遠(とわ)の入り口。

 透明な水面をのぞいてみると、思ったよりも深そうだ。落ちたら上がって来られないかもしれない。

 はるか遠くは、キラキラと輝いているようにも映る。あっちには、なにがあるんだろう。

 ふと、氷のかたまりに目が止まった。大きくて、アーモンドのような形。とってもきれい。
 触ってみると、想像よりも冷たくない。氷というより、ガラスみたいなさわり心地。

 一瞬、ぽわんと虹色に光った。氷の中に、なにかある。そっと近づいて、のぞき込むように見る。


「──え?」

 人……形……?
 人の形をした男の子が、目を閉じて立っている。胸の前で手を握って動かない。

「あの、大丈夫……ですか?」

 呼びかけても反応はなくて、息をしているかもわからない。

 どうして、氷の中にいるんだろう。
 サラサラの黒い髪に、長いまつ毛。どことなく、夜宮先輩に似ている。

 しばらくして、虹色は消え、氷の表面は元に戻った。さっきのは、なんだったんだろう。

『プーイッ! プーイッ!』

 プイプイがまた騒ぎ始めて、さらに奥へ足早に行くと、誰か倒れているのが目に入った。

「──せんぱいっ!」

 すぐに夜宮先輩だとわかった。
 黒髪は水にぬれていて、横たわったまま動かない。

 どうしよう。パニックになって、呼吸の仕方がわからなくなる。

 とにかく、ここから脱出しないと。
 夜宮先輩が死んじゃうかもしれない!