不吉な気がして、わたしはゆっくりとオルゴールのネジを回した。

 ──夜宮先輩に、なにかあったのかもしれない。

 その勘が外れてくれたらいいのだけど。

 キラキラした音楽が流れ始めて、緊張してくる。たしか、次は本の背表紙をピアノのように触っていたはず。

 これだったかな。分厚い本にタッチしようとして、指が止まる。その隣だった気もする。どうしよう、外国語ばかりでわからない。

 迷っていると、プイプイがいきおいよくジャンプして、本にぶつかった。
 次はひとつ飛ばして、その次は斜め上へ。当たるたびに音が出て、ひとつのメロディーを作っていく。

「……プイプイ、すごい」
『プーイッ!』

 最後の音をならし終えると、ゴトゴトと本が動き出し、真ん中に紺色の扉が現れた。

 ごくりとツバを飲み込んで、黒い翼のマークに手を当てる。ギィィとにぶい音を立てて、暗い道が開く。
 怖くて足が震えてる。頬をパチンとたたいて、気合を入れたら。

「よし、行くよ!」

 足を一歩踏み入れただけで、冷たい空気に変わった。

 バタンッ──。
 入り口が閉じて、後戻りできなくなる。


「……どうしよう。やっぱり怖いよ、真っ暗だよ。帰りたいよ」

 弱々しく泣き声になると、目の前にいるプイプイから光が放たれた。紫の灯りが、ランプみたいに照らしてくれる。

『プイプイ!』

 ついて来て、とはげまされた。プイプイがいてくれてよかった。