あらためて写真を見て、胸の奥が苦しくなる。
 夜宮先輩のお兄さん。エメラルドグリーンのペンダントは、お兄さんの形見だと言っていた。

 この人が……ずっと憧れていた記憶の中の人なの?
 あの日、なんのために、わたしの前に現れたんだろう。

『プイプイ! プイッ!』

 急に大きな声を出すから、肩がビクッとなる。
 なにかを(うった)えるみたいに、手足をパタパタさせながらないている。

「どうかしたの?」

 プイプイのあとをついていくと、今度は本棚の前でさわぎ始めた。オルゴールの上に乗って、飛び跳ねて。

 落としたら、壊れちゃう。持ち上げようとしても、小さな手でしがみついて離れようとしない。どうしたらいいの?

 そのとき、昨日の光景が頭に浮かんだ。重そうな本たちが、左右へ避けて道を作ったこと。

「……もしかして、扉を開けたいの?」

 そうだとうなずくように、プイプイは頭か体かわからない部位を二度動かした。

 そんなこと言われても……。
 オルゴールを手にしながら、困ってしまう。夜宮先輩が帰って来るのを、待った方がいいよね。

 ──ガシャンッ。
 なにかが割れる音がして、驚いて振り向いた。

 床には、さっき置き直したはずの写真立てが落ちていて、ガラスが割れている。しっかり立てかけたのを確認したのに。