広場を抜けて、交差点へ出る。手を振って二人と別れたら、こそこそと人気のない小道へ入った。
 キョロキョロとまわりを確認して、制服の右ポケットからプイプイを取り出す。

「夜宮先輩の家まで、案内してくれる?」

『ププイプイ!』

 まかせてと言うように、可愛らしい返事が戻ってきたとたん、人の目を感じた。
 慌ててプイプイを隠すけど、近くに誰もいない。
 今、誰かに見られている気配がしたけど、気のせいかな……。

 なんだか怖くなって、小走りでその場を離れた。

 浮かぶプイプイに連れられて、夜宮先輩の家へたどり着いた。チャイムをならすと、チグサさんが中へ入れてくれた。

「クレハ様は、ただ今お留守でして。もうすぐお戻りになられますので、よろしければ、お部屋でお待ちください」

 きらびやかな壁紙。黒いソファーの上で、ギュッとスカートを握る。
 お言葉に甘えて、先輩の部屋へ入ってしまったけど、勝手によかったのかな。

 ふんわりと紅茶の香りがする。なんだか落ち着くな。

 まったりとしていたら、プイプイがチェストの上で跳ね出した。いろんな飾りが置かれているから、また壊されたら大変。

「今日は大人しくしてようね」

 抱き上げた拍子に、パタンと写真立てが倒れた。
 いけない! 夜宮先輩の大切な……。