シャルロットの髪をなでていたトーコちゃんが、なにか考えるようにそっとまぶたを閉じた。

「そうなんだよ。気になるから、帰りに佐原ん家寄ってみようかと思ってて」
「それはいい案ですね。めずらしく唯野くんと意見があったということで、リリちゃん。調査ですよ」

 きれいな黒髪をなびかせて、ほんのわずかだけど笑っている。いつもポーカーフェイスのトーコちゃんが。

 佐原くんのことは、わたしも変だなと引っかかっていた。もしも、悪魔のしわざだったら……そう頭を過ぎったりして。

 だから、行くとしても二人を巻き込むわけにはいかない。

「よし、決まりだ! 今日は早めに終わるから、待っててくれ」
「えっ、待って! わたし、用事が……」
「おーい、唯野! 休憩終わりだぞ。女子とイチャイチャしてないで早く戻れー」

 顧問(こもん)の吉田先生が脇にボールを二個抱えて、こっちを見ている。
 ヤベッと焦った様子で、レオはコートへ戻ってしまった。

 吉田先生が近づいてきて、私とトーコちゃんの前でしゃがみ込む。

「えーっと、天塚と(かぜ)……」
風水(かざみず)です」
「ああ、そうか。応援はよろしいが、練習の妨げにならないように」
「申し訳ありませんでした」

 トーコちゃんと一緒に、ペコリと頭を下げる。

「じゃ、気をつけて帰りなさい」
「はーい」

 さてと、と立ち上がったトーコちゃんは、準備をするからと先に教室へ帰って行った。

 ……どうしよう。本気で佐原くんの家へ行くつもりだ。
 でも、悪魔が関係していると決まったわけじゃない。何事もありませんように。