学校へ着いてから、トーコちゃんの視線がチクチクと飛んできている。授業中もトイレへ行くときも、ずっと見られている気がして。

 わたしの肩に手を置きつつ、パタパタとはたくしぐさをしている。

「なにかあります」

 その手の方に、無言で視線を落とす。トーコちゃんの手の上で、ビクビクしながらプイプイが飛び跳ねていた。

 昨日、夜宮先輩の家で倒れてからの記憶がない。気付いたら、家のベッドで寝ていたの。

 お父さんとお母さんも、いつも通りだった。
 お屋敷で見たもの聞いたことは、すべて夢だったのかもしれない。
 そう心の中で言い聞かせるけど、甘酸っぱいローズティーが口の中に残っていた。

「えーっと、霊でも……ついてる?」

 さりげなくプイプイをつまんで、ポケットへ入れる。

「いえ、それは分かりません。でも、今日のステルラ占いで、リリちゃんに紫の影が見えました。七年間占ってきて、初めてのことです。これは悪魔に取りつかれたに違いありません」

 少々早口で説明しながら、わたしの体中をチェックしている。トーコちゃんの勘と占いは当たる。ど、どうしよう。

 とりあえず、気配は感じているようだけど、見えてはいないみたい。プイプイ、ここで大人しくしててね。

 なんとかごまかせたけど、トーコちゃんの監視の目は放課後まで続いた。