「お家の人は? さっきの、執事さん……とか」
「チグサはお世話係だけど、仕事で忙しいんだ。彼の時間を、僕のワガママでとるわけにはいかないから」

 ご両親はお仕事で忙しいのかな。それとも、なにか事情があって一緒に住んでいないのかもしれない。
 こんなにも大きな屋敷で、夜宮先輩は一人ぼっちなんだ。

「だったら、毎日通います! わたしが、先輩の話し相手になりますよ。一緒に、おいしい紅茶たくさん飲みましょう!」

 いきおいよく立ち上がったら、先輩は少し驚いた顔をした。
 それから、クスッとまぶたを細めて、楽しそうな声で。

「それは心強い。満月の夜は寂しいんだよね。今日はずっと、そばにいてくれる?」

 急に甘い香りに包まれて、ドキッとする。

 夜宮先輩は、たまにズルい顔になって、わたしを困らせるの。
 遠い記憶に残る憧れの人と、同じ目で見つめてくるから。

「そ、それは……」
「冗談だよ。困らせてごめんね。ありがとう」

 優しくほっぺをなでられて、余計に胸がキュンとなる。

 好きになっても、いいのかな。
 天使とか、悪魔だとか関係なく。
 夜宮先輩のそばにいたい。


 ──ガチャン。