黒いソファーにちょこんと座って、あたりを見渡す。
 広い部屋の中に、高そうな絵や暖炉(だんろ)があって、まるで別の世界に来てしまったみたい。とある魔法学校の談話室を思い出す。

「……カッコイイお部屋。トーコちゃんのお部屋もすごいけど、なんだかワクワクします」
「そう。僕ひとりで使うには広すぎて、あまり好きじゃないけどね」

 一瞬した寂しそうな目が気になったけど、夜宮先輩がおいでと手をとる。

 大きな本棚の前に置かれたオルゴール。先輩がネジをまわすと、キラキラと音楽が流れてきた。
 その音色に合わせるように、本の背表紙に触れていく。まるで、ピアノを弾くみたいに、リズムよく。

 最後の本に触ったとたん、本が左右へさけていって、紺色の扉が現れた。

「……すごい。映画みたい」

 ぽかんとしていると、先輩が黒い翼のマークに手を当てて、ガチャッと鍵が開く。

「暗いから、足元に気をつけて」

 手を繋いだまま、長い階段を降りて行くと、いくつか道が分かれていた。
 この前、家の土間収納(どましゅうのう)から入った地下とは違う。もっと広くて、こっちの空気の方が重い。