小学校低学年までは、レオがよくうちへ来て遊んでいた。

 おままごとをしたいわたしと、戦いごっこがいいレオ。順番といいながら、結局途中で人形が攻撃されるの。プリンセスの人形をかかえながら、わたしはいつも泣いてたっけ。

 でも、そのあとにレオが謝ってくれて、仲直りする。

『ぼく、ヒーローになりたいんだ』
『レオが?』
『うん、悪者(わるもの)をやっつける! 悪魔から、リリアのこと守ってやるよ』

 あの頃は、『レオのくせに、かっこつけてる〜』とか言って笑っていたけど。今でもレオは、ずっとわたしを気にかけてくれている。

「あのね」
「本日はファンタジーランドへお越しくださり、ありがとうございます〜!」

 口を開いたとき、誰かに話しかけられた。うす汚れたウサギの着ぐるみだ。

「素敵なカップルのお二人に、こちらプレゼントです」

 赤いハートの風船が差し出される。
 どうしよう、とレオを見ると、軽く頭を下げて受け取っていた。仕方なく、わたしもお礼を言って風船を手にとる。

 違いますって、否定する間もなくスタッフは去って行った。