「アイツ、なに考えてんだろ。こんなの、絶対におかしい。いくら知り合いのとこだからって、不気味すぎるだろ」

 茶色の髪をくしゃっとさせて、気が立っている様子。

 言えない。夜宮先輩を悪魔か試しているなんて、レモンを口に入れられても言えないよ。

「でも、スタッフさんいるね。貸し切りみたいなものだし、とりあえず……楽しもう?」

 ほんとは嫌だけど。パーク全体がきもだめしみたいで、死ぬほど怖いけど。

 ベンチに座って、二人が来るのを待つ。
 さっきは、いきなり走ってごめんと言われた。気にしないでと返したけど、なんだかレオは落ち着かないみたい。

「リリアって、夜宮先輩と仲良いのか?」
「うーん、仲良いのか、まだよく分からないというか」

 人差し指をあごに当てて、考える人のようなポーズをとる。
 プロポーズまがいのことをされた気はするけど、好きと告白されたわけじゃない。

「あの人はやめとけ」
「それ、どうゆう意味?」

 急に真顔になるから、背筋がヒヤッとした。いつものレオらしくない緊張感が伝わってくる。

「好きになるな。ほら、先輩モテるし。誰にでも優しいから……自分だけが特別なのかもって、思ってんじゃね、みんな」

 少し言いづらそうに、声が小さくなっていく。
 たぶん、レオは心配してくれてるんだ。わたしが、失恋して傷つかないように。